電脳を 10 年使って、壊れてしまった。新しいものを買わなければならない。待つことはできない。やはり電脳は私とこの世界との唯一の接点だ。10 年もこの村を出たことがない。だから今回の外出は期待に満ちている。
しかし、道中に特別なことや異常なことは起こらなかった。10 年も村を出ていないことを誰も気づかなかった。心は穏やかで、感情も安定していた。悲しみも喜びもなかった。車窓の外には黄色い迎春花と暖かく穏やかな 4 月が広がっていた。
私はここを通り過ぎるだけで、一時的にその村に住んでいるだけだとわかっている。しかし、誰にもそのことは知られていない。